
三田市藍本にある、緑に囲まれたカフェ【march】(マーチ)さん。2026年7月24日(金)にオープン4周年を迎えたこの日、marchさんのInstagramに、2027年2月末をもって閉店するというお知らせが投稿されました。
するとすぐに、驚きと感謝、そして前向きな温かい言葉が次々と届いたそうです。そこで今回は、オーナーの前中さんに、marchが生まれた理由から4年間で見てきた景色、そして残りの6ヶ月のことまで、じっくりとお話を伺ってきました。
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「閉店」ではなく「卒業」。marchが迎える、4年目の一区切り
こちらの閉店を知らせる投稿には、たくさんの反応があったことがわかります。いいねやコメント欄はもちろん、DMにもそれぞれの思い出が綴られた文章が次々と届いたそうです。
「閉店」と聞くと、どうしてもネガティブな面や寂しさが先に立ちますよね。でも、オーナーの前中さんにお話を伺っていると、寂しいんだけどそれだけじゃない。前中さんが口にされたのは「なんだか卒業前みたい」という、前向きな言葉でした。
あぁなるほど。そのほうが、スッと腑に落ちます。

思えば、さんだびよりが初めてmarchさんを訪ねたのは、オープンから2ヶ月ほど経った2022年の秋のことでした。

当時の取材で聞いた「人の心に寄り添うカフェ」というコンセプトのまま、4年経った今でも変わらずそこに在り続けてくれました。嬉しいことがあった日も、ちょっと疲れた日も、いつもの顔で迎えてくれる。
これだけ多くの人に愛され、そして閉店を惜しまれているのはきっと、その変わらなさなんだろうと思います。
「こんなにいろんな人に目を向けてもらってたんだな」お知らせのあとに届いた言葉で実感
── marchさんのInstagramをフォローされている方は、もうご存知だと思うんですけど、先日ちょっと重大なお知らせがありましたよね。
前中 はい。今年の2026年7月24日(金)で、オープン4周年を迎えたんですけれど、ちょうどこのタイミングで皆さんにお伝えするのがいいと思って。2027年2月末をもって一度、marchを一区切りして閉店しますという事を、告知させていただきました。
── わたしもあの投稿を拝見しましたけど、すごい反応だったみたいですね。
前中 普段、来てくださってるお客さんだったり、オープンする前からmarchのアカウントを見つけてくださっていた方とか、思ってた以上にたくさんの方からコメントやDMをいただきましたね。
── そっか、コメントはわたしからも見れましたけど、DMもいっぱい来てるんですね。
前中 そうなんですよ。コメントとはまた別にDMで、marchへの愛とか、わたしへの思いをそれぞれの言葉を綴ってくださっている方が、すっごくたくさんいらっしゃって。そして翌日には、「見ました」って、すぐお店に直接、来てくださる方もいらっしゃいました。
もちろん、嬉しいなっていう気持ちもありつつ、こんなにいろんな人に目を向けてもらってたんだなっていうのを、改めて実感しましたね。

── あの投稿を見て「えっ?!」って、めっちゃ驚かれた方が大半だとは思うんですけど、それを受け入れて咀嚼して、「あんなこともあったな、いいお店だよな」って思い出しながら、前中さんに気持ちを伝えたいって方がすごく多かったんでしょうね。
これこそ、お店とお客さんとの理想の関係性というか……すごい羨ましいです。
前中 本当にありがたいなと思います。ゴールが決まってしまったということで、ずっとこれからもお客さんに応え続けることができない現実があるので、なおさら残りの期間は、いただいたお気持ち以上のものを返せるように頑張らないとな、とも思いました。
幼稚園の先生としてやってきたことが、いろんな人にも当てはまると思った

── せっかくなので、まず昔話から振り返れたらと思うんですけど。そもそも前中さんって、以前は幼稚園の先生をされていたんですよね?
前中 はい、わたしが幼稚園の先生をしている中で大事にしてきたことだったり、子どもたちに対してやってきたことって、もしかしたら幼稚園から外に出ても、いろんな人にも当てはめられるんじゃないかなと思って。
季節を感じて、五感を動かして、環境を整えて、みんなと一緒に遊んで。園児たちが「面白いな」とか「楽しいな」とか「明日も幼稚園に来たいな」って思えるように支える、みたいなあり方ですね。
そんな、自分の大事にしてきたことを詰め込めるような、そういう場所が作れたらいいなと思って。届けたいこと、やりたいことを突き詰めていったら、結果的に「march」というカフェになったんです。
── そうなんですね。カフェを始める人って、ドリンクやスイーツだったりをまず重視されるものだと思ってましたけど、marchさんはそれよりも、場所作りから入ったんですね。
前中 お店の中に絵本を飾ったりとか、季節が感じられるようなコーナーを用意したり。窓からもすごくきれいな景色が見えるんですけど、ドリンクやスイーツ以外にも、そういった要素の一つひとつが横並びであって、marchを形作れたらいいなと思って。
あとはもう、お客さんたちがそれぞれの楽しみ方で、いろいろなmarchを感じてもらえたらいいなって、ずっとそう思っています。
自動ドアが閉まるまでの数秒で、厨房でガッツポーズをしてました

── この4年間を振り返ってみて、本当にいろんなことがあったと思うんですけど、今パッと思い浮かぶような思い出深いエピソードってあったりしますか?
前中 例えば、ご予約のお電話をもらって、お客さまがお電話を切られるまでのほんの数秒間なんですけど、電話口から「よかったね、楽しみやね!」といった素の会話が聞こえたりとか。お子さんの声で「やった!シュークリームある〜」って聞こえたりとか。
あと、レジが終わって「ありがとうございました」ってお見送りして、自動ドアが閉まるまでの数秒、お車に戻られるまでの間に、「いや、ほんまめっちゃ幸せやったわー」って、一緒に来られた方と話されてる瞬間とかを見かけると、もう本望だなというか(笑)
── いやー、そのさりげない素の感想って、めっちゃ嬉しいですよね!
前中 そうなんです。もちろん「おいしかったよ」とか「また来ますね」って直接、お声をかけてくださるのも本当に嬉しいんですけど。そういうさりげない一言が聞こえてくると、お客さまがそれぞれの楽しみ方でmarchを満喫してもらえたんだなっていうのを実感できる瞬間があって。
そういうときは本当に嬉しくて、厨房でガッツポーズをしてます(笑)
── ご本人たちはたぶん、前中さんにそうやって伝えようと思ってない本音の一言だからこそ、また価値がありますよね。

前中 あと、ご自身のスマホに入ってる、marchのシュークリームの写真を見せてくださった方もいらっしゃって。「実はわたし、アルバムを作ってるんです」って言って、今までの季節限定のとかを見せてくださった方もいらっしゃいました。
── えー、それもう、めっちゃファンじゃないですか(笑)
限られた時間の中でチャレンジする。4年間を、ただただ駆け抜けてきた
── これまでの4年間、前中さんの中でどういった心の動きがあったのかな、と。もちろんオープンした当初は、4年後に区切りをつけるとか、そういう気持ちはなかったわけですよね?
前中 そうですね。ただ20年30年と、わたしがおばあちゃんになってもこの場所でmarchを続ける、っていうよりは、限られた時間の中でチャレンジするという意識は、オープンする時からありました。
でもいざ、区切りを決めようかな?って思ったときは、「本当に?本当にいいの?」っていう、自分自身への問いかけというか、葛藤はすごくありました。結局、2年近く悩んで、ようやく決めたことではありますね。

── 同じ事をずっと続けていくのって、なかなか難しいですよね。この4年って長かったですか?短かったですか?
前中 決して短かったとは思わないですけど、それでもオープンしてすぐのことが、昨日のことのように思い出せたりもします。
自分自身では、ただただ駆け抜けてきたっていう感じですね。でもオープンしたときに赤ちゃんだった子が、もう小学校目前だったり。保育所とか幼稚園に行ってて、お母さんと一緒に遊びに来てくれてた子が、ランドセル姿で来てくれたりとか。
そういう姿を見て、「ああ、それだけ時間が経ったのかぁ」って、実感することはありますね。
marchからもらった「肥やし」を、今度は幼稚園の子どもたちに

── marchを終えられてから先の話って、もう決まってたりするんですか?
前中 はい、また幼稚園の現場に戻って、子どもたちと向き合う毎日になると思います。
この4年間、この場所で、素敵なお客さんたちに囲まれて、心豊かに過ごすことができたので、ここで見たもの、感じたことっていうのは、わたしの中にずっと残ると思います。
そんな、marchからもらった「肥やし」みたいなものを、今度は幼稚園の子どもたちにも伝えたり、届けたりしていけたらいいなぁと思っております。
── その肥やしから新しいものが生まれたり受け継がれたりして、良い循環になっていきそうですね。あと、これはわたしの願望として聞いてもらったらいいんですけど。marchが4年だったから、また幼稚園で4年ぐらい過ごされて、さらにそこから「marchの第二章」みたいなことがあったりとかは……?
前中 今言えることとしては、marchのInstagramアカウントは、ずっと残しておきたいと思ってます。わたしも今回の経験で、すごくカフェのお仕事が楽しいというか、いいお仕事だなって本当に思わせてもらったので。いつかまたタイミングがあったときには、marchのアカウントを動かせたらいいなと思います。
本当に何年後か、何十年後か、自分ではまだまだ分からないですけど、シュークリームはずっと作れるようにしておこうとか、腕が鈍らないようにしたいなとか、そういう気持ちがあります(笑)
── おおお、では皆さん、marchのアカウントはフォローし続けておきましょうね!
「寂しいんだけど、目いっぱい思い出作りをして」残りの6ヶ月へ

── 来年の2月末まで、残すところあと6ヶ月ほどですね。残りのこの時間、お客さまにはどう過ごしてほしいな、みたいな思いはありますか?
前中 わたし自身も、感謝の気持ちや前向きな気持ち、そして申し訳ない気持ちと、いろんな感情を抱えながら残りの期間、頑張ろうかなと思っています。
お客さまもきっと毎日いろんなことがあって、バタバタすることも多いし、やりたいことだったり、やらなきゃいけないことだったり、たくさんあると思うんです。
でもその中で「march、行きたいな」って思う瞬間があったときに、あと半年ありますので、それぞれの皆さんのタイミングで、それぞれの楽しみ方で、marchとの思い出を作って過ごしてもらえたら嬉しいなと思いますね。
さいごに

インタビューを終えたあと、前中さんが「こんな感じで良かったですかね?ちょっとよく分からなくなってきました」と、笑っておられたのが、なんだかとてもmarchさんらしいな、と思いました。
あと、最初から最後まで、閉店が決まっているこの状況に対して、一度も湿っぽく感じなかったことも印象的でした。marchは終わるのではなく、4年間かけて育ててきたものを大事に携えて、次の場所へ持っていく。だから前中さんは、あんなに晴れやかだったんだと思います。
残りは6ヶ月。急がなくていい、けれど忘れないうちにもう一度、marchさんを訪れてみてはいかがでしょうか。
わたしも残りの6ヶ月、いっぱいシュークリーム食べに行こうと思います!
住所: 〒669-1358 兵庫県三田市藍本322-1
営業時間:11:00〜16:30(当日分がなくなり次第営業終了)
定休日:木曜・金曜(不定休あり)
TEL: 079-558-7933
SNS: Instagram
イートイン、テイクアウト予約について:
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