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「お客さまは自分の欲しいケーキをご存じではない」小山進が語るファンタジー・ディレクターと三田の未来

三田市下深田のプライベートヘアサロン nobu hair(ノブヘアー)

2017年11月、三田市ゆりのき台にある「パティシエ エス コヤマ」の敷地内に、デコレーションケーキ専門店の「夢先案内会社FANTASY DIRECTOR」(ファンタジー・ディレクター)が誕生しました。

今回はエスコヤマのオーナーシェフである小山進さんに、ファンタジー・ディレクターが生まれた理由や、15年前から拠点とする三田についての印象の変化などをお伺いしてきました。その様子をインタビュー形式でお伝えします。

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メルヘンチックな童話の世界のような存在感。デコレーションケーキ専門店「夢先案内会社FANTASY DIRECTOR」

近所のケーキ屋さんに行くと、ディスプレイされたデコレーションケーキがひとつ。そのケーキを買い求め、年齢分のローソクとプレートに「お誕生日おめでとう!」のメッセージを入れてもらう。

……誰もが経験したことのある、家族や友人の誕生日の光景ではないでしょうか。

2017年11月、三田市ゆりのき台にある「パティシエ エス コヤマ」の敷地内にまた、新しい店舗が生まれました。その名も「夢先案内会社FANTASY DIRECTOR」(以下、ファンタジー・ディレクター)。数あるスイーツの中でも、デコレーションケーキに特化した専門店です。

童話の世界を飛び出してきたような外観とこの扉。誰がケーキ屋さんのそれだと想像できるでしょう?木の陰さえも、デザインのひとつとして計算されているかのように思えてしまいます。

店内に入るとそこはもう、メルヘンの世界に迷い込んだかのような空間。毎日20種類以上のオリジナルや新作デコレーションケーキが並ぶほか、世界にひとつの完全オーダーメイドのデコレーションケーキも注文できます。

オーダーメイドのデコレーションケーキというと、大きなサイズのケーキしか頼めないんでしょ?って思われるかもしれませんが、例えば5号サイズ(15cm、4〜6人前)のような小さなケーキでもオーダーメイド可能なんだとか。

こんなにたくさんのデコレーションケーキが並ぶディスプレイは、ほかのケーキ屋さんではちょっと見たことがありません。高価でゴージャスなものもあれば、意外とリーズナブルなものだったり、可愛らしいデザインのデコレーションケーキも並んでいますね。

とにかく、前述したような「これまでの誕生日の光景」をガラッと変えてしまうくらいのインパクトと世界観です。

……と、そろそろなぜ今回、ファンタジー・ディレクターさんに来ているのかを、ちゃんと説明しないといけませんね。

なぜかというと、なんと今回、小山進シェフに直接お話を伺うことができる機会をもらえたんです!ホントもう、ビックリですよね。

わたしが「さんだ日和」というメディアをはじめた頃には漠然と、「将来、小山シェフに会えるようになるまでのメディア力をつけたい!」と思っていました。小山シェフに会えること=メディアとしてのゴールとすら考えていたほどです。

実際にお会いした感想はまたあとで書きますが、とにかく緊張しまくりでした(笑) 前日から「何を聞こう?こんなことを聞いたら失礼かな?」などと、あーでもないこーでもないと頭を悩ませました。

新店舗の「ファンタジー・ディレクター」のことはもちろん、常に進化し続けるエスコヤマの未来、そして小山シェフは、今の三田をどのように見ているのか?

聞きたいことはたくさんありました。それらをインタビュワーを務めてもらった岡本さんとも共有し、いざインタビュー当日を迎えたわけです。

三田の自然と都会とのコントラストが、良質なインプットやアウトプットにつながる

── まず最初に、小山シェフが三田に来られて拠点にされているその理由から教えていただけますか?

小山 三田に来たのは、じっくりモノづくりをしたかったから。あともっと大事だったのは、三田で過ごすことで自分をアウトプットできやすい状況に置きたかった。それが僕が三田に来た理由です。

僕は京都の五条生まれなんですが、母が兵庫県の加美町多可(現:多可郡多可町)の出身だったので、子どもの頃は夏休みの1ヶ月間、田舎で過ごすことが多かったんです。

その田舎で虫採りや魚採りをしたり、突き抜けるような青い空を見て「わぁスゴい!」って感動したことを、夏休みが終わってから京都の友だちによく話していました。

そうやって、子どもの頃からインプットとアウトプットを繰り返している人と、なにもせずにただ専門の技術だけを身につけていくような人とでは、圧倒的な差が生まれるんです。

ミュージシャンでもグラフィックデザイナーでも、自分のインプットを作品に変換して発表して、それがウケるかウケないかが全てですよね。それはほかのどんな仕事でも一緒のはず。

三田という自然あふれる土地に身を置きながら、パリやニューヨークといった都会から南米の奥地といったいろんな場所に行くと、そのコントラストでそれぞれの土地の良さや日本の良さ、そして三田の良さがわかるし、珍しいものにも気づける。

そんな経験も、僕にとって良質なインプットやアウトプットになっています。

ファンタジー・ディレクターをつくったのは、想定外になってしまったものを想定内に戻したいから

── これまで本店以外にも多くの専門店を敷地内にオープンされていますが、今回デコレーションケーキ専門店のファンタジー・ディレクターが生まれた理由はどういったところでしょうか?

小山 現状、ここまで店舗が増えて敷地も大きくなりましたけど、ビジネスとしての規模を大きくしたいという考えはまったくないんですよ。僕は商売をしようと思っているのではなくて、モノづくりを発表したいだけなんです。

でも、ゆっくりモノづくりをしようと思って三田に来たのに、並ばないとケーキが買えない。それこそ、買いにくい売り場を作ってしまった。それは自分でも想定外でした。「あー間違えてしもた」って。

そこでまず最初に、小さいチョコレート専門店をつくりました。小山ロールは並ばないと買えなかったけど、チョコレートは並ばずに買えた。そういった「並ばずに買える」ということを、まずは実現したかった。

その後に、マカロン専門店やパン工房などを本店から分けたのもその理由です。何人かのお友達などで来られた時に、小山ロールを待っている間にほかのお店で商品を買っていただく。次々と分家していってるのは、買いやすさを求めてのことなんです。

でも毎回、「これでなんとか完備できた!」と思っても、それでも改善できていなくて。売り場は日々、変化してますからね。じゃあ次はどうしたらいいだろう?本店からなにを分家させたらいろんなことが円滑に進むだろう?

そう考えた時、今のベストな選択がデコレーションケーキ部門を切り離すことでした。

小山 これまで特別注文のデコレーションケーキは、ギフトサロンでオーダーや受け渡しを行っていました。でもギフト商品をお求めのお客さまとでサロンが混雑してしまって、「予約してるのに並ばないといけないのか!」というお叱りを受け続けていたんですね。

専門店を分家することは、想定外になってしまっていたものを想定内に戻す。自分のカラダじゃないような状態でスタートしてしまっていたものを、自分のカラダに戻すための作業なんです。そうすることで結果として、お客さまにとってどんどんわかりやすいお店になっていく。

そしてさらに5年後か6年後あたりで、ラインナップを整理した本店を大改装する予定にしています。これは初年度からあった構想なんですが、とんでもないお店になると思いますよ(笑)

お客さまのファンタジーをディレクションしてカタチにするのが僕たちの仕事

── 本店の大改装、今からとても楽しみです!あと事前にファンタジー・ディレクターのコンセプトムービーを拝見しました。いろんなメッセージが隠されていそうな、印象的な世界観ですね。

小山 あのコンセプトムービーには幾つかのキーワードを盛り込んでいて、魔法の壷は【技術力】、引き出しは【潜在意識】、そして鍵は【コミュニケーション能力】を表しています。

小山 パティシェが先ず、お客さまの要望をしっかりヒアリングします。そこにはコミュニケーション能力が必要です。そして要望を聞くだけではなく、主張すべきところはしっかりと主張しながら。

意外に思われるかもしれませんが、お客さま自身も実は、自分の欲しいものをわかっているようでわかっていない事がほとんどです。

お客さまの頭の中にあるファンタジーを魔法の壷がディレクションしてカタチにし、鍵をつかって引き出しから封筒を取り出して「あなたのケーキはこれですよ」って差し出してあげる。それが僕たちの仕事です。

それで、お店の名前を「ファンタジー・ディレクター」と名付けました。

小山 普通に考えたら、自分の欲しいものは自分でわかっていて当然と思いますよね。でも、お客さまの好きなものを全部盛り込めば素晴らしいデコレーションケーキができるのかと言えば、必ずしもそうではない。

お客さまからしっかりとヒアリングをしながらも、自分たちのクリエイティビティを最大限に駆使する。まさに「料理の鉄人」と同じですよ。そうして自信を持ってケーキをお出しすると、「そうそう、これよこれ!」って言ってもらえるんです。

── よくぞカタチにしてくれました!って感覚ですよね(笑)

小山 そうなんです、お客さま自身で想像していたものを、それ以上のカタチで具現化して「これよ!」って思わせるのが、僕たちの使命だと思っています。

今の世の中は“圧倒的”不足。本当に良いものを見てもらいたい。

小山 今の時代って中途半端にやることは全然、魅力的ではないんです。そしてお客さまがどんなケーキを欲しいと思っているかなんて、誰もご存じない時代。みんな迷ってます。それはなぜかというと、情報がありすぎるから。

そういった時代に、絶対にお客さまに信頼していただけるものって何かというと、それは【圧倒的】なものでしかない。「もう全てお任せします」と言ってもらえるような存在にならないといけないんです。

あとファンタジー・ディレクターの建物ひとつにしたって、なぜああいったものをつくったのかというと、子どもや大人にも本当に良いものを見てもらいたい。見せてあげたいんです。

ああいった空間に身を置くと、大人も子どもの気持ちに戻れますよね。

圧倒的な空間を見せて、圧倒的な背中を見せる。そうして次世代のクリエイターが生まれるキッカケをつくりたいと思ってます。もちろんそれはケーキ屋じゃなくてもいい。

とにかく今の世の中は、“圧倒的”不足なんですよ。

三田はサン・セバスチャンになれる可能性を持っている

── 地元である三田のお話もさせていただきたいのですが、小山シェフが三田に来られた15年前の当時と現在とを比べて、三田に対する印象ってなにか変わりましたか?

小山 三田は篠山とも隣接している地域なので、生産者さんがスゴく多いですよね。あとクリエイターやアーティストの方もスゴく多い場所だなぁと、今は思ってます。三田に来る前は全然知らなかったけど。

そういう意味では「三田はモノづくりの人が集まる町」という印象に変わりましたね。

あと感じていることは、三田は高速道路をはじめとした交通のアクセスがメチャクチャいい。市街地で商売をされている方は電車しか意識してないかも知れませんが、僕はあまり電車を見ていません。あ、もちろん電車は乗りますよ(笑)

新大阪や新神戸あたりを中心に考えると、行ける範囲が限られてくる。でも空路を考えると、もっともっと行動範囲が広がると思うんです。

エスコヤマのお菓子教室にも、上海あたりから団体のお客さんがバンバン来られるんです。上海から関空までの飛行機で2時間ほど、関空からレンタカーを借りたらここまで1時間30分くらいかな。

小山 あの生徒さんたちが上海の家を出てから何時間後に三田に着いてるのかな?って考えたら、4時間もあれば三田まで来ていただけてるんですよね。

レンタカーだったらここに来ていただいた後に、丹波焼の立杭に行ったり、有馬温泉に行ったり、あと神戸に行くことだってできますよね。ただ現実的には、年間100万人ほどのお客さんが来られてるんですが、そのほとんどがどこにも寄らずに帰られてます。僕はその状況を変えたいんです。

三田がひとつの入口になれば、兵庫県や関西は変わると思いますよ。それには近隣との連携やセッションがもっともっと必要ですけどね。

小山 さらに言うと、例えば千丈寺湖のまわりにレストランが10軒くらいできて、郊外と市街地に20件くらい魅力のあるお店ができたら、三田はサン・セバスチャン(※)みたいになれる可能性を持ってると思います。

※サン・セバスチャン=スペインの山岳リゾート都市。各国からグルメが押し寄せる世界一の美食の町。

あとは、新宮さんの風のミュージアムあたりでフェスとかがバンバン行われるようになったらいいのに、って思いますね。東京から来る友人なども「良いところだね」って言ってくれるんですよ。ここでコンサートできるじゃんって。

技術は必須条件。子どもの頃の豊かな体験こそが、わたしのクリエイトの源泉

── 子どもしか入れない店舗の「未来製作所」をつくられたりと、小山シェフは将来を担う子どもたちにも並々ならぬ思いを感じます。三田に住む子どもたちやその親御さんたちに向けてのメッセージはありますか?

小山 せっかく三田には自然があるんだから、自然遊びをしてほしいですね。そして日本には四季がありますから、四季折々の香りや色・温度なんかを、視覚や嗅覚といった五感を使ってインプットしていって欲しいです。

三田に住んでるのに自然を見ないとか、自然遊びをしないなんてもったいないですよ。

大人たちによく「小山さんはどこでケーキ作りを学んだんですか?」って聞かれるんですけど、技術はもちろん必須条件ですよ。でも僕が今いろんなケーキを生み出せるのも、自然と都会とのコントラストを体感して、インプットとアウトプットを重ねてきたからこそなんです。

技術なんかよりむしろ、そっちのほうが大きい。

そういった子どもの頃の豊かな体験が、想像力を磨くために大事なことだったり、クリエイトの源泉になったりするんです。大人の人たちって意外とそういうことに注目してくれないので、もっともっと伝えていきたいですね。

さいごに

小山シェフご自身でもおっしゃっていましたが、インタビューを終えて感じたことはとにかく【圧倒的】だったこと。事前に考えてきた質問内容は、ほとんど役に立ちませんでした。もちろん、いい意味で。

予定調和なんていらないと一蹴されているかのように、シェフから放たれる言葉の一つひとつに対する熱量というか、空気感に終始圧倒されっぱなしの1時間。ほとんど相づちを打っているだけだったような気もします。

でも、その予測不可能な感じがとても楽しくて。そして潜在的に聞きたかったことが、シェフからお話いただけたような気がします。デコレーションケーキだけでなく、インタビューも見事にディレクションされてしまったな……と思いましたね(笑)

三田の豊かな自然があるからこそ成立する、パティシエ エス コヤマの圧倒的な世界。その最たるものが、今回新しくオープンしたデコレーションケーキ専門店の「夢先案内会社FANTASY DIRECTOR」(ファンタジー・ディレクター)とも言えるでしょう。

小山シェフをはじめとするパティシェや、スタッフの皆さんの技術と経験、そして知識とセンスが集結して生み出される最高のデコレーションケーキ。そう聞くとなかなか敷居が高そうなイメージになりがちですが、定番のものや季節モノでも2〜3千円台とリーズナブルなデコレーションケーキもあります。

今度のご家族や友人の誕生日、そして大切な記念日にはぜひ一度、ファンタジー・ディレクターの圧倒的な世界に触れてみてください。

さいごに今回、小山シェフとお会いできたことは決してゴールなんかではありませんでした。むしろ最高のスタートが切れたような気がしています。

インタビュワー:おかもと きょうこ
撮影・文章:山見 ミツハル

ファンタジー・ディレクターの基本情報

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